
CAR-T細胞療法とは?
CAR-T (カーティ)細胞療法は、患者さん自身のT細胞を遺伝子改変し、特定のがん細胞を攻撃するように強化する免疫療法です。
CAR-T細胞とは、キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞の略称で、抗体がもつ敵(がん抗原)を認識する先端部分と、T細胞を活性化するのに必要な細胞内の分子を融合したタンパク質を作ることが出来るような遺伝子を導入したT細胞です。
当院では2024年9月現在、北九州地区で初となるCAR-T細胞療法導入病院となりました。悪性リンパ腫の患者さんへの新たな選択肢として期待されています。

私たちの体にはがん細胞を攻撃・排除しようとする「免疫システム」が備わっています。免疫は、血液中の様々な免疫細胞が連携して働きますが、特にがん細胞を直接攻撃するのがT細胞と呼ばれるリンパ球のひとつです。
この治療ではまず患者さんの血液から機械を使ってリンパ球を採取し、その中から免疫細胞のひとつであるT細胞を取り出します。そしてこのT細胞にがん細胞を攻撃する「CAR(カー)」(別名:キメラ抗体受容体)と呼ばれる突起のようなものを遺伝子導入という特殊な方法で取り付け、患者さんの体に戻すというものです。
CAR-T細胞は患者さんの体の中でどんどん数を増やしながら、がん細胞を攻撃して死滅させます。一度体内に入ったCAR-T細胞は長く残り、再びがん細胞が生まれても早めに攻撃し、がんを予防する効果もあります。
治療の流れ

CA-T細胞療法について詳しく知りたい方は
- •まずご自身の担当医にご相談ください。
- •担当医は、診断名、治療経過、併存症の有無、全身状態などを考慮し、治療適応であるか否かを判断し説明します。
- •担当医が治療適応と判断し、かかられている施設が、CAR-T治療施設でない場合、担当医は、CAR-T治療施設に、診療情報提供書(紹介状)を作成します。
当院で取り扱っているCAR-T療法(※2025.2月現在)
「イエスカルタ®」
【対象患者】※適応にはさまざまな条件があります。
- ①びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
- ②原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫
- ③形質転換濾胞性リンパ腫
- ④高悪性度B細胞リンパ腫
Q&A
- Q1. CAR-T細胞療法はすべてのがんに適応できますか?
- A. いいえ。現在は特定の血液がん(B細胞性のリンパ腫・白血病)が適応となっています。
治療が受けられるかどうかは、これまでの治療歴や現時点での体調なども考慮して検討します。詳しくは主治医にご確認ください。 - Q2. CAR-T療法にはいくつか種類がありますが、違いは何ですか?
- A. CAR分子の種類、T細胞成分の割合、対象となる病気の種類などが異なります。2025年2月現在、承認されている5種類のCAR-T療法がありますが、患者さん自身のT細胞を使ってCAR-T細胞を製造する点ではいずれも共通しています。治療の流れも基本的に同じです。
異なる点は、がん細胞を捕らえるためのCAR分子の種類や、含まれる細胞の割合などが挙げられます。その結果承認されている適応症の種類にも違いがあります。
当院ではその中で「イエスカルタ」を導入しています。 - Q3. 副作用はありますか?
- A. あります。特にサイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性が起こる可能性があります。
- Q4.サイトカイン放出症候群はいつ頃発現しますか?
- A.イエスカルタを投与してから、数日以内にあらわれることが多い副作用です。
- Q5.サイトカイン放出症候群ではどのような症状が見られますか?
- A.主な症状は以下のとおりです。
- 発熱、寒気がして体が震える
- 体がだるい、脱力感
- めまい、立ちくらみ
- 全身のむくみ、尿量が減る
- 息切れ、息が苦しい
- 意識の低下、消失
- 胸の不快感、動悸
- 脈が速くなる、脈がとぶ、脈が遅くなる
- 唇、手足の指先が青紫色になる
- Q6.どのように治療を受けることができますか?
- A. まずは主治医にご相談いただくか、当院の血液内科にお問い合わせください。
医師の紹介

血液内科 主任部長 米澤昭仁
- 輸血部部長
- 京都大学医学部臨床教授
- がん診療部副部長
- 日本血液学会 指導医 専門医
- 日本内科学会 認定医 総合内科専門医 指導医 教育責任者 評議員
- 日本がん治療認定医機構 指導医 認定医
- 日本造血細胞移植学会 造血細胞移植認定医
- 日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医
- 日本感染症学会ICD
- 日本医師会 認定産業医
- 日本輸血細胞治療学会 認定医
- 日本エイズ学会 認定医
- 日本救急医学会 ICLSインストラクター
- 日本内科学会・内科救急 JMECCインストラクター
- 日本リンパ網内系学会
- 細胞治療認定管理士
- 医学博士